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E)アイス

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それは日差しが暑い、とある初夏の日。


「雪親、アイス食うのか?」
「ん?うん」


あまりの暑さに雪親が冷凍庫からアイスを取り出したのが、そもそもの始まりだった。

雪親が取り出したのは、一袋にビニール製の容器に入ったアイスが二つ入っている『パペコ』という商品だ。
一人で食べ切れない事はないが、どちらかと言えば誰かと分ける方が無難だ。


「雪親…」
「あぁ、シュバルツ。どうしたの?」
「……食べるのか?」


二人が冷蔵庫の前で話していると、シュバルツがやって来て雪親の手の中の物を目敏く見つけた。


「うん、そのつもり。パペコはこれで最後みたいだったし…」
「「半分、くれっ!!」」
「…………」


全く同じタイミングで、同じポーズで、同じ事を言う二人を雪親は呆れた表情で見た。


「……引け」
「……貴様こそ、譲れ」
「嫌だね。雪親の半分パペコは俺のだ」
「いいや、私のものだ。貴様になぞ勿体ない」
「はっ!お前にあのパペコのよさが、分かるとは思えないな!」
「では貴様は、あのパペコのよさが分かっているというのか?随分な欺瞞だな」
「…………………」


目の前で繰り広げられる、パペコを巡る争いに冷ややかな視線を送ると、雪親はおもむろにパペコのビニールを開けて、中身を取り出した。
そして、くっついている二つのパペコを切り離し、蓋をあけると今だ言い争う二人の口にパペコを突っ込んだ。


「「……?!!」」
「もぅ!いい大人が、アイスぐらいで喧嘩しないのっ!」


腰に手をあて、堂々と背の高い二人を見上げて怒った。


「それあげるから、二人で静かに食べてなさいっ!!」


そう言って、もう一度冷凍庫をあけると『ジャリアントコーン』を取り出し、食べながらどこかへ行ってしまった。


「「………………」」


レギオン、シュバルツ両名は口にパペコを突っ込んだまま、呆然とその後ろ姿を見送った。





  数日後…  





「ただいま~」
「スノーレット兄さん!お帰りなさい」
「パペコ買ってきたんだけど、食べない?この前、食べれなかったんでしょ?」
「兄さん…」
「はい、雪親」
「ありがとうっ!スノーレット兄さん」
「「雪親!パペコを…」」
「「…………は?」」
「「…………………」」


タイミングって、大切ですね……





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