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ト)落ちた音

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パンパンと互いの身体がぶつかる音と共に混ざる、くちゅくちゃという水音。
結合部分からは、既に何回も中で吐き出されている性があふれ出してきている。
自分の口から洩れ出る声は、既に嬌声ではなく吐息に近い。
既に声も嗄れ、訴えようにも手段がない。

「っっっうっんん!!!」
「っく!!」

奥の敏感な部分を突かれ、ビクリッと背中を仰け反らせる。
直ぐに中に違和感を感じ、再びあふれ出す性が増えた事を悟る。


クロードと婚約をしたその時から、ワタシは人形と化してしまった。
言われた事をやり、言われた通りに過ごす。
それ以外は何も考えず、ただ静かに息をするのみ。

心に思いを秘めて苦しい思いを引きずるよりはと、己から心を手放した。

毎夜の様にクロードに抱かれ、ただ性処理人形の如く行為を繰り返す。


もう、無理だ……


そう思った次の瞬間には、ふわりと崩れ落ちる様に意識を手放した。





「んっ……?」

ちゅんちゅんという鳥の鳴き声と共に、ゆっくりと意識が覚醒していく。
既に、朝なのか…
けだるい身体は、昨夜の行為の激しさを如実に物語っている。
起きたくない…
そうは思うものの、起きなければならない。
ゆっくりと目を開ければ、目の前に端正な顔立ちがあった。

白い肌、さらさらとした髪、長い睫毛、スッキリとした鼻、形のいい唇。
凛々しく、強すぎる光を帯びるその瞳は、今は眠っているため伺う事は出来ない。

切れ者よと恐れられるその顔は、今は穏やかに眠りについている。

まるで物語の王子様の様だと宮中の女官達が騒いでいたのを思い出す。
確かに、こうしていると昔読んだ物語の王子の様にも見えなくは無い。

外見とは裏腹に、その奥にはひどく黒い何かが渦巻居ている事もまた事実ではある。

行為を思い出し、気分が沈む。
所詮、ワタシには関係の無い事だ。
身体を起こそうとして、ふと違和感に気がつく。

捕まえられて……いや、抱きしめられている?

そう言えば…とふと思い出す。
腹の中に吐き出された性は、いつもワタシが起きる前には綺麗になっていた。
身体も清められており、新しい寝巻きが身に着けられている。
今日も気だるさはあるものの、綺麗にされているようだ。
それに激しい行為の次の日は、いつも謁見の予定は入っていなかった。
必要以外の書類は全て他へとまわされ、午後までかかるような仕事はまず無い。

穏やかな寝息を立てるクロードの顔を、まじまじと見る。

確かに毎晩の様に抱かれはするが、以前の様に無理強いされる事は無かった。
いや、むしろワタシの一番良いところを…

ソコまで考え、自分の考えに恥ずかしくなり顔が熱くなる。

「ん……?」
「?!!!!」

身じろぎをし目を開けるクロードと目が合ってしまい、ビクッと身体を震わせる。

「おはよう、リオン」
「お……はよ…」
「おや、今日は随分と素直だ」
「?!!」

クスリと笑うその顔に、再び顔が熱くなる。
大切なものを見つめる様なその視線に、胸の奥が騒ぎ出す。

己の顔を見られたくなく、再びベッドの中へと潜り込む。

気のせいかもしれない…
気のせいではないのかもしれない…

それを確かめるには、まだ時間が必要な気がする。
だから、もう少しだけ、このままで…
今はまだ、気がつきたくない…





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