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木々の囁き

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  3. 木々の囁き
(1)水鏡
(2)はろはろうぃーん
(3)異意同音
(4)







(1) 水鏡



薄暗い山道。
頼る光は淡く儚い。
我が神。至高が日輪。
その対となり、似ており、異なる物。
山頂近くにある泉にも、同じようにそれはあった。
清く、静かな水面に映る、丸く大きなその光…………満月。
城の裏手の小さな山の、山頂近く。
月が満ちたその夜に、一つの泉が湧き出でる。

その泉に月を映し、中を覗けば答えが出てくる。

そんな昔からの寝物語を思い出したのは、偏(ひとえ)にあ奴が事を知りたいが為。
幼き頃には姫若子と呼ばれ、すぐに病に臥せっていた。
年を重ね、己を自ら”鬼”と称する様になり、胸を撫で下ろした。

これで、病に倒れる事は無くなったのだと………

あの苦しげな顔を、見ずに良くなるのだと………

愛しき者が苦しむのを、ただ見るだけしか出来なかった。
側に居る事しか出来なかった。
己の力の無さに、何度苛立ちを感じたことか。
もう、二度とあるまいと思った気持ちを、再び感じようとは…………

「月は………満ちた」

水面には、白銀の月。
そっと中を覗き込み、その答えを知る。

- 癒えぬ傷は無けれども 去り行く蛍は消え逝かん -

知らなければよかった。
戦場で受けた傷は、とうに癒えていた。
しかし、あの頃の様に何日も熱にうなされていた。
蛍は、己でこの地を去ろうとしているのか。己で消えようとしているのか………
我を一人置いて、我をこの地に残して………

- パシャン -

水面に手をやり、波立たせる……月をつかみ、持ち上げた。
目の辺りまで持ち上げた手を広げれば、そこから小さな光が飛び去った。
その光は淡く儚く、一人空へと舞い上がった。
水鏡より出でた蛍は、空の満月(みつき)へと一人旅立つ。
決して迷わず、振り返らずに、その美しき紫の光を身にまとい。


_____

戦国時代というぐらいです。
いつ、どこで、どのように…
本人に覚悟はあっても、周囲の人間は願わずにはいられないでしょう。

どうか、生きて帰ってき欲しいと…


暗い話は苦手ですι
甘々なほのぼのが、一番好きだ…w




(2) はろはろうぃーん



瀬戸内で有名な武将の名を上げろと言われれば、長曽我部元親と毛利元就であろう。
しかし、ここ最近そこに異国からの渡来人であるザビーと言うものが入って来るようになった。
この人物、武将では無いものの宗教的思想のもと、着々と信者を増やして勢力を拡大させていた。
そう、有名武将などを取り込んで…



「元親!貴様も、ザビー様のお教えを賜れっ!この素晴らしき思想を、世に広めようぞ!」
「あ~、そうかよ」

久々に恋人の所へやって来たら、その恋人は変な宗教にはまってました。
……俺、可哀想。

「おい、聞いておるのかっ!!!」
「聞いてる、聞いてる」

朝一に元就の所に来て、今日一日二人っきりで……とか想像してた俺の思いを、こてんぱんに踏みにじって元就はまた声高に話し出した。

「ザビー様は、我の知らぬ様々な知識を授けて下さる!」

あー、そーかい。

「それに、新しい新しい行事というのも、ご教授下さった!」

くっそー、嬉しそうに笑いやがって。
俺の時は、そんな顔したこと無いくせによぉ……

「はろういんと言って、先祖の霊魂がこの世に帰ってくるという祭りなのだっ!!!」
「……彼岸の事か?」
「馬鹿者!!!我の話は最後まで黙って聞かぬか!」

……理不尽だ。

「これには、まじないの祝詞があるのだ」
「のりとだぁ~?」

なんじゃ、そりゃ?

「うむっ!『とりっく・おあ・とりぃと』と言うそうだ!」
「鳥食う、鳥?」

どんだけ恐ろしい鳥なんだ?

「この、たわけっ!とりっく・おあ・とりぃとだ!」

ってぇなぁ……叩くこたぁ、ねーじゃねーかよ…

「これはだな『菓子をくれねば、悪戯をしてやるぞ』という、脅しの意味をも含められているのだ」

……だから、何なんだ?

「ん?つーか、それって菓子用意しときゃあ、問題ねぇんじゃねぇか?」
「………………。」

図星かよ!!!
ちょっと俯いて、耐えるようにする元就が可愛かったが、泣きそうだから慌てた。

「あ、いや…そいつは、こえーなー!」
「そうであろうっ!そうであろうっ!!!」

……現金なヤツ。
ぱっと顔を輝かせて、嬉しそうになる。
……ちくしょう、可愛いな。

「だから…元親!とりっく・おあ・とりぃと…だ」

後半は顔を紅くしながら、少し見上げるようにしてこちらを見つめる元就。
あ~、も~、こいつは何でこんなに可愛いんだよ。

「おーらよ、大福だ」
「!!!」

土産にと持ってきた大福を渡すと、再び嬉しそうな顔になる元就に、ふと悪戯心が顔を出した。

「元就」
「ふぁれは……んぐっ。今、大福を食すのに忙しい。話しかけるでない」
「とりっく・おあ・とりぃと」
「ふぁふぃ?」
「菓子か、悪戯か……選ばせてやるよ」
「んんっ!!!」

そう言ってその唇に、自分のそれを重ねて口腔内を味わう。
餡の程よい甘さが、舌を包みこんでゆく。

「っはぁ…はぁ……」
「お?これじゃ、両方になっか?」
「この……馬鹿者がっ!!!」
「いでででで!!!」

バシバシと力の限り叩いてくる元就の顔が真っ赤で、叩かれながらも可愛いとまた思っちまう俺も、大概だと思う。
ま、こんな美味しい思いが出来るなら、そのなんちゃらって宗教も悪くないかと思ったりした。

_____

甘いだろ、アニキ!!
なんて、甘さなんだよアニキ!!
そのまま、全部おいしく戴いちゃえば良いのだよアニキ!!!www

ザビーも、たまには良いことしていきますね♪






(3) 異意同音




ねぇ、旦那……
俺、忍失格だと思う。



「そんな事はない!佐助は、素晴らしい忍だ!」

満面の笑顔で、自分の事の様に胸を反らせる旦那を、思わず間抜けな顔で見つめた。

「俺の元で真田忍隊の長として、よく勤め上げている」

そんな佐助が、失格な訳がない!
そう断言する旦那に、思わず笑いが零れた。

「はははっ……そんなに言ってもらえるなら、俺様たまには休暇でも貰いましょうかね?」
「うぐっ…それは………」
「冗談ですって」

本気で悩む旦那に笑いながら言うと、心底安心した様な顔をした。

「佐助がいないと、淋しいからな」
「…………」

そういうとこ、ずるいと思う。
そんな事言われたら、離れる訳にはいかなくなるじゃないか。

「大丈夫に決まってるでっしょ~?俺様、旦那の事が好きだし♪」
「俺も、佐助の事が好きだぞ」

笑顔で言う旦那。
意味は違えど、同じ言葉を言わせるのは、ささやかな欲望。

「いつまでも、いつまでも…お側にいますよ」


小さく歪んだ感情は押し殺して、偽りの笑顔を貼り付けましょう。
貴方を傷つけない様に。
貴方を怖がらせないように。
大切な貴方は、俺が守り抜きましょう。

_____

秘めたる想いは秘めたままで…
忍びが故の、切なる想い…

なんてw

きっと、笑顔で奥方とか迎えちゃう人。






(4) はろおいん




既に冬の気配すら感じられる、この季節。
伊達政宗は、自身の居城で執務に追われていた。

「失礼致します」

今年の秋に備蓄された米の量が…と思考を巡らせていた所へ、届いたのは腹心の声。

「What?(何だ?)どうかしたか」
「甲斐の真田殿より、文が参りまして御座います」
「幸村か」

恭しく恋人からの文を差し出す小十郎にThank'sと言い、先程出来上がった書類を代わりに手渡す。
再び姿を消したのを確認すると、そっとその封を解いて内容を確める。

『政宗殿、お加減等いかがでござろうか。某は、日々鍛錬に勤しんでおりまする!』

猛々しい性格からは思いもしない程に、整った文字。しかしながら、力強さが見てとれるその文字には、自然と笑顔になる。
文はつらつらと止めどなく、自身の日常の事などが書かれていた。

『そう言えば、この間偶然長曽我部殿にお会いする機会があったのですが…』

長曽我部元親の恋人である毛利元就が、謎の宗教にはまってしまっていたと言うのである。

『しかしながら、その宗教は面白い祭を伝えているそうで…』

何でも祝詞を唱えて、甘味を請求する祭なのだとか。

『某も、その祭について詳しく知りたく、これより彼の宗教とやらに参ろうと思っておりまする!』

では、行って参ります!そう結ばれた文を閉じると、無言のまま立ち上がり政宗は部屋を出た。


少しして「小十郎!馬を引けっ!!!!肥前へ…いや、瀬戸内へ殴り込みに行くぞ!!!!」と言う怒声が響いたとか響かないとか。

_____

実はコッソリ続いていたり…www







(5)