学/バサ 1
(1)登校
(2)テスト
(3)浴場
(4)終業式
(5)ついで
(6)雨
(7)
会社へ向かう、忙しそうなサラリーマン。
どこか、けだるそうに歩く女子高生。
キャッキャと戯れながら走る、小学生。
朝の独特な空気と雰囲気の中で、一際目立つ集団があった。
大きな欠伸をしながら、政宗が気だるげに一段の後ろから呟いた。
「Shit(くそっ)!朝早くから、何でこうも騒がしいんだ…」
「政宗は、低血圧だかんな。俺らが起こしに行かなきゃ、昼まで寝てんだろ?」
それに耳聡く、一番先頭を歩いていた元親が聞きつけ、笑いながら答えた。
「真田、走るでない。転ぶぞ…」
「うぉ~!!真田幸村、この肉まんを温かなうちに食しまするぞ!お館様~~~!!!」
その間を歩いていた元就の横を、猛スピードでコンビにの袋を握った幸村が走り抜けていった。
ちなみに『いつもニコニコ明るい笑顔のコンビニ』がキャッチフレーズのバサマートである。
「ちょっ!おぃ!幸村……って、行っちまったぜ…」
「Ah~、勝手に行かせとけ…」
「ふん…後で、猿にでも世話させればよかろう」
「お前ら、それでも友達かよ………ったく。おぃ!幸村ぁ~!!」
もう、どうでもよさそうな政宗と元就にガックリとしながら、元就は先に行ってしまった幸村を、一人追いかけた。
「朝から、無駄に元気がいいな…」
「ふん…単純な奴等だからな」
その後ろを、のんびりと低血圧組が着いてゆく。
きっとクラスでは幸村の様に明るい風来坊が、自分たちを待っているのだろうと予想して。
元気な一団の騒がしい登校風景は、彼等の学舎に着くまで繰り広げられる。
______
友達との会話の中で生まれたもの。
いつもの様にざわめく教室は、同じ様に見えて違う空気だった。
何やら焦った…と言うのが、正しいのかもしれない空気を皆が醸し出していた。
「ふんっ。今更慌てた所で、同じ事よ」
「ふぐっ…んぐ……ぐぐぅ…」
こ奴以外は……。
目の前で次々とパンや握り飯が、その胃袋へと納まってゆく様を見つめる。
一体コレだけの量が、どこに入って行っているのだろうか。
思わず手にしていた書籍から視線を外し、まじまじと見つめた。
「……真田。貴様は何をやっているのだ」
思わず声をかけると、机をはさんだ向かい側でガバッと真田が顔を上げた。
「ふぐふぇ、ふぉへふぁふへ…」
「口に物をつめながら、話すでない」
「んぐっ…ぷはぁ」
眉を顰めて注意すると、真田は一度口に物を詰めることをやめた。
口の中のあんパンを飲み込むと、何故か胸を張る。
何がそんなに嬉しいのだ。
「お館様が申していたのだ!『腹が減っては戦は出来ぬ』と!!」
そう言って、ガサッと新たに袋を開けた。
次は、やきそばパンか…
「だから某、こうして腹を満たしておるのだっ!!」
盛大に噛り付いたパンから、やきそばがパラリと申し訳程度に開かれていた、真田の落書きだらけのノートに落ちた。
そんなに、急いで食べると…
「ふぐっ!!」
やりおった。
突然、顔を真っ赤にすると、真田は慌てて机に置いてあったジュースを一気に飲み、満足そうに息を吐いた。
まったく、落ち着きのない奴だ。
「ふぅ……危なかったでござる…」
「…………」
「うぉ~~~!!某、やりまするぞっ!!お館さぶぁ~~~!!」
……信玄公よ。
こ奴の腹を満たす前に、頭を満たせ。
テストまで、あと10分。
_____
きっと、これが永遠に繰り返されるwww
「~~♪」
日が翳り、かなり時間がたった頃。
久しぶりにゆっくりと大きな湯船へつかろうと、元親は寮で唯一の浴場へと向かった。
「いつもは、あいつ等がうるせぇもんな…」
ふっと小さく苦笑しながら、今は居ない自分の弟分達の姿を思い浮かべた。
ま、それも面白れぇんだけどな…と小さく呟いて、脱衣所で服をパッパッと脱ぐ。
「~♪」
鼻歌など歌いながら、かなり嬉しそうに浴場の扉の前に立った。
中から湯の音となにやら話し声が聞こえる。
「先客か…」
まぁ、どうせ少ねぇしな。と、さほど気にも留めずにカラカラと小さな音をさせて扉を開けた。
一面の真っ白な湯煙で何も見えない状態である。
さぁ、入ろうか…と足を踏み出した瞬間…
「…っん」
その声に、元親は思わずその場で固まった。
別に誰が居ても、もちろん構わない。
何故ならココは、学校寮の浴場。いわゆる、公共の場なのだから。
しかし、何やら中の人物たちの雰囲気がおかしく、その場で耳をそばだてた。
「さ…け……やめっ……!!」
「だって…、……旦那……しょ?」
「しかし……!あっ!!ふっ……」
「ほら…………?」
「っ!!」
何やらピンク色な空気に、混乱した。
(ちょっと待て…ここは、公共の場だ。……って、言う以前にここは男湯……)
「マヂかよ…」
「!!!」
中の誰かが、ハッとこちらに気が付いた気配がしたようだった。
慌てて…しかし、気がつかれない様にこそっと扉を閉めると、元親は急いで浴場を後にした。
顔を真っ赤にしながら。
「佐助!いい加減にせぬかっ!俺はもう自分で洗えると、何度も申しているであろうっ!」
「え~。でも旦那、適当に洗うから俺様気になっちゃって」
「あっ!!……だから、脇腹はよせと申すにっ!……っく……っふ………くくくっ」
「旦那、脇腹は弱いんだよね~。我慢しないで笑っちゃえばいいのに」
「ふっ……っやめ………っくは………」
(そんな事だから、鬼の旦那が勘違いしちゃうんだけどね~)
_____
学生寮にての、一こま…
あれ?佐助と幸村って、大将んとこに居候じゃないの?
………実は、風呂が壊れたので、お借りしてるんです!!
って、ことにしておこう?w
明日からは、長期休暇がやって来る…
誰もがそんな浮かれた気分になるこの日。
終業式。
ここE組みも、その例外ではなかった。
「やりましたぞぉ~!お館様ぁ~~~!!!!!」
いつもの叫び声が聞こえるこのクラスでは、いつもと違った響きがクラスいっぱいにこだましていた。
その発信源である幸村が、喜色満面で通知表を握り締めていたのだ。
「通知表ごときで、喧しい…」
学年一位の秀才、毛利元就は眉根を寄せてその様子を見ていた。
何がそんなに嬉しかったのか…と興味を引かれ、元就は幸村の持つ通知表に目をやってみた。
「なっ……!!?」
学年一位は衝撃を受けた。
チラリと覗いた通知表に並ぶのは、見事にそろった煙突…
(1ばかりではないかっ!これのどこに喜ぶ理由がっ?!)
更に眺めていると、一つだけ光り輝く体育の5の数字!
(これ…か?)
しかし幸村の体育が5なのは、当たり前では…そう考え、少し視線を横へとずらすとすぐ隣に4があった。
「うぉ~!お館さまぁ~!某、5を見事に取り返しましたぞぉ~!!」
「……………。」
「ん?何だ、風魔」
悩む秀才に、いつの間にか側に来た小太郎がトントンと肩を叩いた。
何か書かれたホワイトボードを掲げている。
「『この前まで、テニスがあったから』……成る程」
ふっと笑う元就。
「確かにテニスは力のみでは、どうにもならぬからな」
「うぉ~~~!!!みぃ~なぁ~ぎぃ~るぅ~!!」
「喧しいっ!!」
「ふべっ!!」
未だ騒ぐ幸村にハリセンをかまして黙らせると、満足そうに笑い己の体育以外は5の通知表を持ち、元就は悠然と教室を出て行くのであった。
「……………?」
「う、うむ。大丈夫だ」
こっそりと己の通知表を確認する小太郎。
そこには、音楽と英語以外は5が並んでいる。
「そうか、英語はすぴぃきんぐテストがあったでござるな」
「(コクコク)」
_____
コタ君は、歌のテストと英語のスピーキングは苦手なんですw
そんな感じで、元就様は期待を裏切らず運動苦手組~♪
「おーい!佐助~!!」
「ん?あぁ、鬼の旦那か…どしたの?」
「悪りぃんだけどよぉ、幸村のヤローにコイツ返しといてくんねぇか?」
「んー?何々?…あぁ、旦那の格ゲーね」
「おぅよ!面白かったぜ!んじゃ、よろしくな」
「はぃはぃっと」
「おい、猿飛」
「ん?あぁ、オク……毛利の旦那。何か用?」
「真田の奴に壊した物の分は、きちんと授業後に手伝えと伝えておけ」
「………また、何かやらかしたの?うちの旦那」
「あの馬鹿力で生徒会室の扉を、ぶち壊したまでよ」
「……伝えときますι」
「Hey、猿!!」
「ん?あぁ、竜の旦那か…もぅ、いい加減に俺様の事“猿”って呼ばないでくれる?」
「いいじゃねぇか。短くて呼びやすいだろ」
「全くもう。それで、何の用な訳?」
「It was so!(そうだった!)真田の奴に、いい加減にマンガ返せっつっとけ。あと、授業後に呼びに行くってのもな」
「あ゛~マンガは別に伝えとくけど、今日の授業後は多分無理だと思うよ?毛利の旦那に、何か手伝えって言われたみたいだし」
「Realy?!……仕方がねぇなぁ」
「おぉい!佐助ぇ~~~~~~!!」
「旦那」
「どこにおったのだ。探したではないか」
「あぁ、ゴメンね?で、何か用?」
「うむ、慶次殿にゲームを貸そうと思ったのだが、見当たらぬのだ」
「あぁ、もしかしてコレ?さっき鬼の旦那から、返すの頼まれたんだけど?」
「おぉ!正にコレだっ!!では、授業後に政宗殿と共に……」
「毛利の旦那とも会って、授業後に生徒会を手伝えって伝言頼まれたよ?それと、竜の旦那はマンガ返せって」
「うっ…うぬぅ…」
「旦那、忘れてたでしょ?このゲーム、俺様が前田の風来坊に渡しとくから」
「す、すまぬ…」
「って訳で、俺様が来た訳なんだけど」
「……お前は、幸村のオカンか」
「…………それ、地味に凹むからやめて」
_____
地味に、私の中で佐助はオカン。
誰が誰だか、お分かりになられたでしょうか?
分からなかったら、ご連絡を~
名前フリますwww
学校へと向かういつもの道。
土砂降りの中を、一人の男子生徒が傘を差しながら気だるげに歩いていた。
「……Shit!!」
折角の煙草の火も消えちまう…と、天を睨んだ。
「コレだから、雨は嫌いなんだよ…」
小さく呟き、もう一度くわえた煙草に火をつけなおした。
きっと先に学校へ向かっていった友人は、教室でいつもと変わらぬバカ騒ぎをしているのであろう。
雨が降った日は必ず遅刻する己を、きっと笑って迎えるのであろう。
胸いっぱいに吸い込んだ紫煙を吐き出しながら、道の曲がり角をゆったりと曲がり、ふっと視線を前へとやるとそこには驚くべき衝撃があった。
-プシュッ…
小さな音を立てて、足元の水溜りで紅い光が消え去った。
しかし、政宗はそんなことすら気がつかない様子で、目の前の光景に口を開いていた。
これは夢だ…そう思っていしまう程、その光景は彼にとって信じられないものだった。
「Inconceivable…(ありえねぇ…)」
そう呟く政宗の視線の先には、薄ピンク色の傘の下で仲良く寄り添う………………………………織田夫婦。
傘を右手に持ち、左手は濃姫の腰に添えている。
あまりにもスマートにこなす織田校長の姿に、学校とのギャップを見た政宗は、ポケットから携帯を取り出した。
「…………猿か。わりぃけど、今日は休むわ……」
それだけ言うと、フラフラとしながら政宗は今来た道を引き返して行った。
「上総介様、お肩が濡れてしまいますわ」
「……構わぬ。濃…ちこう寄れ…」
「はぃ」
_____
優しい魔王様とか、地味に怖い気がしますwww
(2)テスト
(3)浴場
(4)終業式
(5)ついで
(6)雨
(7)
(1) 登校
会社へ向かう、忙しそうなサラリーマン。
どこか、けだるそうに歩く女子高生。
キャッキャと戯れながら走る、小学生。
朝の独特な空気と雰囲気の中で、一際目立つ集団があった。
大きな欠伸をしながら、政宗が気だるげに一段の後ろから呟いた。
「Shit(くそっ)!朝早くから、何でこうも騒がしいんだ…」
「政宗は、低血圧だかんな。俺らが起こしに行かなきゃ、昼まで寝てんだろ?」
それに耳聡く、一番先頭を歩いていた元親が聞きつけ、笑いながら答えた。
「真田、走るでない。転ぶぞ…」
「うぉ~!!真田幸村、この肉まんを温かなうちに食しまするぞ!お館様~~~!!!」
その間を歩いていた元就の横を、猛スピードでコンビにの袋を握った幸村が走り抜けていった。
ちなみに『いつもニコニコ明るい笑顔のコンビニ』がキャッチフレーズのバサマートである。
「ちょっ!おぃ!幸村……って、行っちまったぜ…」
「Ah~、勝手に行かせとけ…」
「ふん…後で、猿にでも世話させればよかろう」
「お前ら、それでも友達かよ………ったく。おぃ!幸村ぁ~!!」
もう、どうでもよさそうな政宗と元就にガックリとしながら、元就は先に行ってしまった幸村を、一人追いかけた。
「朝から、無駄に元気がいいな…」
「ふん…単純な奴等だからな」
その後ろを、のんびりと低血圧組が着いてゆく。
きっとクラスでは幸村の様に明るい風来坊が、自分たちを待っているのだろうと予想して。
元気な一団の騒がしい登校風景は、彼等の学舎に着くまで繰り広げられる。
______
友達との会話の中で生まれたもの。
(2) テスト
いつもの様にざわめく教室は、同じ様に見えて違う空気だった。
何やら焦った…と言うのが、正しいのかもしれない空気を皆が醸し出していた。
「ふんっ。今更慌てた所で、同じ事よ」
「ふぐっ…んぐ……ぐぐぅ…」
こ奴以外は……。
目の前で次々とパンや握り飯が、その胃袋へと納まってゆく様を見つめる。
一体コレだけの量が、どこに入って行っているのだろうか。
思わず手にしていた書籍から視線を外し、まじまじと見つめた。
「……真田。貴様は何をやっているのだ」
思わず声をかけると、机をはさんだ向かい側でガバッと真田が顔を上げた。
「ふぐふぇ、ふぉへふぁふへ…」
「口に物をつめながら、話すでない」
「んぐっ…ぷはぁ」
眉を顰めて注意すると、真田は一度口に物を詰めることをやめた。
口の中のあんパンを飲み込むと、何故か胸を張る。
何がそんなに嬉しいのだ。
「お館様が申していたのだ!『腹が減っては戦は出来ぬ』と!!」
そう言って、ガサッと新たに袋を開けた。
次は、やきそばパンか…
「だから某、こうして腹を満たしておるのだっ!!」
盛大に噛り付いたパンから、やきそばがパラリと申し訳程度に開かれていた、真田の落書きだらけのノートに落ちた。
そんなに、急いで食べると…
「ふぐっ!!」
やりおった。
突然、顔を真っ赤にすると、真田は慌てて机に置いてあったジュースを一気に飲み、満足そうに息を吐いた。
まったく、落ち着きのない奴だ。
「ふぅ……危なかったでござる…」
「…………」
「うぉ~~~!!某、やりまするぞっ!!お館さぶぁ~~~!!」
……信玄公よ。
こ奴の腹を満たす前に、頭を満たせ。
テストまで、あと10分。
_____
きっと、これが永遠に繰り返されるwww
(3) 浴場
「~~♪」
日が翳り、かなり時間がたった頃。
久しぶりにゆっくりと大きな湯船へつかろうと、元親は寮で唯一の浴場へと向かった。
「いつもは、あいつ等がうるせぇもんな…」
ふっと小さく苦笑しながら、今は居ない自分の弟分達の姿を思い浮かべた。
ま、それも面白れぇんだけどな…と小さく呟いて、脱衣所で服をパッパッと脱ぐ。
「~♪」
鼻歌など歌いながら、かなり嬉しそうに浴場の扉の前に立った。
中から湯の音となにやら話し声が聞こえる。
「先客か…」
まぁ、どうせ少ねぇしな。と、さほど気にも留めずにカラカラと小さな音をさせて扉を開けた。
一面の真っ白な湯煙で何も見えない状態である。
さぁ、入ろうか…と足を踏み出した瞬間…
「…っん」
その声に、元親は思わずその場で固まった。
別に誰が居ても、もちろん構わない。
何故ならココは、学校寮の浴場。いわゆる、公共の場なのだから。
しかし、何やら中の人物たちの雰囲気がおかしく、その場で耳をそばだてた。
「さ…け……やめっ……!!」
「だって…、……旦那……しょ?」
「しかし……!あっ!!ふっ……」
「ほら…………?」
「っ!!」
何やらピンク色な空気に、混乱した。
(ちょっと待て…ここは、公共の場だ。……って、言う以前にここは男湯……)
「マヂかよ…」
「!!!」
中の誰かが、ハッとこちらに気が付いた気配がしたようだった。
慌てて…しかし、気がつかれない様にこそっと扉を閉めると、元親は急いで浴場を後にした。
顔を真っ赤にしながら。
「佐助!いい加減にせぬかっ!俺はもう自分で洗えると、何度も申しているであろうっ!」
「え~。でも旦那、適当に洗うから俺様気になっちゃって」
「あっ!!……だから、脇腹はよせと申すにっ!……っく……っふ………くくくっ」
「旦那、脇腹は弱いんだよね~。我慢しないで笑っちゃえばいいのに」
「ふっ……っやめ………っくは………」
(そんな事だから、鬼の旦那が勘違いしちゃうんだけどね~)
_____
学生寮にての、一こま…
あれ?佐助と幸村って、大将んとこに居候じゃないの?
………実は、風呂が壊れたので、お借りしてるんです!!
って、ことにしておこう?w
(4) 終業式
明日からは、長期休暇がやって来る…
誰もがそんな浮かれた気分になるこの日。
終業式。
ここE組みも、その例外ではなかった。
「やりましたぞぉ~!お館様ぁ~~~!!!!!」
いつもの叫び声が聞こえるこのクラスでは、いつもと違った響きがクラスいっぱいにこだましていた。
その発信源である幸村が、喜色満面で通知表を握り締めていたのだ。
「通知表ごときで、喧しい…」
学年一位の秀才、毛利元就は眉根を寄せてその様子を見ていた。
何がそんなに嬉しかったのか…と興味を引かれ、元就は幸村の持つ通知表に目をやってみた。
「なっ……!!?」
学年一位は衝撃を受けた。
チラリと覗いた通知表に並ぶのは、見事にそろった煙突…
(1ばかりではないかっ!これのどこに喜ぶ理由がっ?!)
更に眺めていると、一つだけ光り輝く体育の5の数字!
(これ…か?)
しかし幸村の体育が5なのは、当たり前では…そう考え、少し視線を横へとずらすとすぐ隣に4があった。
「うぉ~!お館さまぁ~!某、5を見事に取り返しましたぞぉ~!!」
「……………。」
「ん?何だ、風魔」
悩む秀才に、いつの間にか側に来た小太郎がトントンと肩を叩いた。
何か書かれたホワイトボードを掲げている。
「『この前まで、テニスがあったから』……成る程」
ふっと笑う元就。
「確かにテニスは力のみでは、どうにもならぬからな」
「うぉ~~~!!!みぃ~なぁ~ぎぃ~るぅ~!!」
「喧しいっ!!」
「ふべっ!!」
未だ騒ぐ幸村にハリセンをかまして黙らせると、満足そうに笑い己の体育以外は5の通知表を持ち、元就は悠然と教室を出て行くのであった。
「……………?」
「う、うむ。大丈夫だ」
こっそりと己の通知表を確認する小太郎。
そこには、音楽と英語以外は5が並んでいる。
「そうか、英語はすぴぃきんぐテストがあったでござるな」
「(コクコク)」
_____
コタ君は、歌のテストと英語のスピーキングは苦手なんですw
そんな感じで、元就様は期待を裏切らず運動苦手組~♪
(5) ついで
「おーい!佐助~!!」
「ん?あぁ、鬼の旦那か…どしたの?」
「悪りぃんだけどよぉ、幸村のヤローにコイツ返しといてくんねぇか?」
「んー?何々?…あぁ、旦那の格ゲーね」
「おぅよ!面白かったぜ!んじゃ、よろしくな」
「はぃはぃっと」
「おい、猿飛」
「ん?あぁ、オク……毛利の旦那。何か用?」
「真田の奴に壊した物の分は、きちんと授業後に手伝えと伝えておけ」
「………また、何かやらかしたの?うちの旦那」
「あの馬鹿力で生徒会室の扉を、ぶち壊したまでよ」
「……伝えときますι」
「Hey、猿!!」
「ん?あぁ、竜の旦那か…もぅ、いい加減に俺様の事“猿”って呼ばないでくれる?」
「いいじゃねぇか。短くて呼びやすいだろ」
「全くもう。それで、何の用な訳?」
「It was so!(そうだった!)真田の奴に、いい加減にマンガ返せっつっとけ。あと、授業後に呼びに行くってのもな」
「あ゛~マンガは別に伝えとくけど、今日の授業後は多分無理だと思うよ?毛利の旦那に、何か手伝えって言われたみたいだし」
「Realy?!……仕方がねぇなぁ」
「おぉい!佐助ぇ~~~~~~!!」
「旦那」
「どこにおったのだ。探したではないか」
「あぁ、ゴメンね?で、何か用?」
「うむ、慶次殿にゲームを貸そうと思ったのだが、見当たらぬのだ」
「あぁ、もしかしてコレ?さっき鬼の旦那から、返すの頼まれたんだけど?」
「おぉ!正にコレだっ!!では、授業後に政宗殿と共に……」
「毛利の旦那とも会って、授業後に生徒会を手伝えって伝言頼まれたよ?それと、竜の旦那はマンガ返せって」
「うっ…うぬぅ…」
「旦那、忘れてたでしょ?このゲーム、俺様が前田の風来坊に渡しとくから」
「す、すまぬ…」
「って訳で、俺様が来た訳なんだけど」
「……お前は、幸村のオカンか」
「…………それ、地味に凹むからやめて」
_____
地味に、私の中で佐助はオカン。
誰が誰だか、お分かりになられたでしょうか?
分からなかったら、ご連絡を~
名前フリますwww
(6) 雨
学校へと向かういつもの道。
土砂降りの中を、一人の男子生徒が傘を差しながら気だるげに歩いていた。
「……Shit!!」
折角の煙草の火も消えちまう…と、天を睨んだ。
「コレだから、雨は嫌いなんだよ…」
小さく呟き、もう一度くわえた煙草に火をつけなおした。
きっと先に学校へ向かっていった友人は、教室でいつもと変わらぬバカ騒ぎをしているのであろう。
雨が降った日は必ず遅刻する己を、きっと笑って迎えるのであろう。
胸いっぱいに吸い込んだ紫煙を吐き出しながら、道の曲がり角をゆったりと曲がり、ふっと視線を前へとやるとそこには驚くべき衝撃があった。
-プシュッ…
小さな音を立てて、足元の水溜りで紅い光が消え去った。
しかし、政宗はそんなことすら気がつかない様子で、目の前の光景に口を開いていた。
これは夢だ…そう思っていしまう程、その光景は彼にとって信じられないものだった。
「Inconceivable…(ありえねぇ…)」
そう呟く政宗の視線の先には、薄ピンク色の傘の下で仲良く寄り添う………………………………織田夫婦。
傘を右手に持ち、左手は濃姫の腰に添えている。
あまりにもスマートにこなす織田校長の姿に、学校とのギャップを見た政宗は、ポケットから携帯を取り出した。
「…………猿か。わりぃけど、今日は休むわ……」
それだけ言うと、フラフラとしながら政宗は今来た道を引き返して行った。
「上総介様、お肩が濡れてしまいますわ」
「……構わぬ。濃…ちこう寄れ…」
「はぃ」
_____
優しい魔王様とか、地味に怖い気がしますwww